スーパーや八百屋さんではなかなか見かけないので、手にして戸惑っている人もいるかもしれません。
僕は農業を始めてはじめて知りました。
まず色鮮やかな外見に驚き、育てて食べてみるとめちゃくちゃ美味しいお野菜でした。
それ以来、農園では毎年必ず育て販売しています。旬の時期には毎日のように食卓に上がる存在です。
ふだん草との違いやちょっとクセのある味わいを生かした美味しく食べられるおすすめの調理法もお伝えします。
では簡単にスイスチャードとはどんなお野菜なのか?ということから見ていきましょう。
スイスチャードってどんな野菜?不断草/フダンソウとの違いは?
スイスチャードはホウレンソウに近いお野菜でホウレンソウと同じようにお料理することが出来ます。
地中海が原産でビーツの仲間。赤や黄、白や紫、ピンク黄緑など鮮やかな色合いの茎や葉脈はほかの葉物になかなか見られず特徴的です。
珍しさと目を引く色合いに、初めて見るにもかかわらず直売でも購入される方が多いお野菜です。
西洋名を「スイスチャード」近い品種が日本にもあり日本名で「ふだん草」と呼ばれます。
ふだん草は葉は緑、茎はスイスチャードがカラフルで細めなのに対して、ふだん草の茎は幅広でボリュームがあります。
味はどちらもほとんど変わりません。
暑さにも強いので一時期は夏場にほうれん草の代用として育てられていたことがありますが、ほうれん草の品種改良が進むと市場からは姿を消したと種やさんから聞きました。
スーパーなどでは「うまい菜」という名前で販売されていたので見かけた人がいるかも知れません。
ふだん草は漢字で「不断草」と書き、名前の由来は一年中丈夫に「断えまなく育つ」こと、また「普段から生えている」からという意味合いで付けられたと言われています。
同じく近い種類のビーツは根も食べますが、葉がスイスチャードそっくりで味もほとんど同じです。
スイスチャードはどこで手に入るの?
一般的な流通には乗らないので、農産物の直売所や宅配が主に手に入れる手段になると思います。
その他には、とても丈夫なお野菜でポイントさえ守れば育てやすいので家庭菜園をやっている人は畑で、条件が良ければベランダのプランターでも栽培することが出来ます。
大きく育てられると、小松菜など他の葉物のように根元からカブごと収穫せず、サンチュのように葉を一枚ずつ掻いて収穫できるので長い間楽しめます。
育て方については後ほどお伝えします。
スイスチャードの収穫期と旬
基本的に一年中育ち収穫できますが、旬は秋から冬と春、10~5月くらいまでです。
一番柔らかくて味わいよく美味しいのは冬から春にかけて、12~4月ころになります。
秋は育つ途中の若々しいフレッシュな味わい、冬の寒さにあたり甘みと味わいが増し、春は新芽がしっかりした食感と強い味わいになります。
夏場はどうしても葉が固くなりがちです。
スイスチャードの調理のポイントやおいしい食べ方から調理法までおすすめレシピと合わせてご紹介
スイスチャードは見た目は珍しいですが炒め物から汁物、煮物など普通の葉物野菜と同じようにいろいろな調理法でお使いいただけます。長い加熱では色がくすんでしまうので、わりとサッと調理することが色を楽しむポイントになります。
ただし、加熱することで引き出てくるクセになってしまう独特の香りと味わいがあるので加熱しながらも色がキレイなポイントを探すことが見た目も美味しさも楽しむコツになります。
どちらかというとちょっと色合い残念な気もしますが、加熱をすることで得られる味わいを優先させることをおすすめします。
色合いは生のうちや調理の中で楽しめば充分かもしれません。
スイスチャードは香りが強い分もしかしたらある意味、好き嫌いがはっきり分かれるお野菜かもしれませんが、その香りにハマればラッキーだと思います。
元中華の料理人だった僕が何度作っても美味しく、こればかり作ってしまうスイスチャードのおすすめレシピを2つご紹介します。
まず初めは、
香りが良くてしっかり味 ご飯がすすむ「スイスチャードの醤油炒め」
フライパン一つで簡単に作れてめちゃくちゃ美味しい
材料も超シンプルながら満足のいく一品になります。
〈材料一覧〉
・スイスチャード又はふだん草
・菜種油
・お酒
・お醤油
・好みで胡麻油
材料はこれだけ。さあ、作っていきましょう!
〈作り方〉
・スイスチャードはよく洗い茎と葉を手でちぎり離しておく
※葉が大きい場合は洗っている最中に切り離すと洗いやすいです
・茎は一口大、葉は大きめの一口大に切り
ザルにあけて水気を切っておく
・フライパンに中強火で油を熱して
茎を入れて炒める
全体に大きく混ぜて油がなじんだら
葉も入れて炒める
※油が足りない様であれば途中で上からかけて加えます
・そのまま中強火で炒めて
水分がだいたい飛んだら
お酒を入れ、同量くらいのお水を入れ
※水分は少なめに、足りなくなったら足す気持ちで
・お醤油で味付けをして
全体を混ぜてそのまま中強火で炒める
※ちょっと多いかなくらいのお醤油でしっかり味付けします
・しばらく炒めたらフタをして中火に落とす
・たまにかき混ぜて様子をみて
水分が少なったらフタをあけて
中強火に上げて水分をとばすように炒める
・茎が好みの柔らかさになっていればOK
火を弱めてお好みで胡麻油を少量入れて全体を大きく混ぜる
これで出来上がり!
季節によりますが、見た目よりも柔らかくなるのが早いので手際よく短時間で仕上げることが出来ます。
ご飯と共に食べると最高です。
続いてもう一品
作りたても翌日も美味しい「スイスチャードのお味噌汁」
ほうれん草に似ているので同じように使えるスイスチャードですがこれはスイスチャードならではのメニューです。
〈材料一覧〉
・スイスチャード又はふだん草
・お味噌
あとはお好みで大根、人参などの根菜やきのこを入れてもバッティングしないので大丈夫です。
ここでは超シンプルなスイスチャードのみのバージョンをご紹介します。
では、作っていきましょう
〈作り方〉
はじめは同じ
・スイスチャードはよく洗い茎と葉を手でちぎり離しておく
※葉が大きい場合は洗っている最中に切り離すと洗いやすいです
・茎は一口大、葉は大きめの一口大に切り
ザルにあけて水気を切っておく
・深鍋にお水を入れてフタをして中火にかけて沸かす
半分くらい沸いたら茎を入れてフタをしてそのまま火にかける
・沸いたら葉を入れてフタをしてそのまま沸かす
しっかり沸いたらフタをしたまま弱火に落として5分火にかける
・フタをあけてお味噌を入れて弱火のまま一息おく
お味噌がやわらかくなったら溶いて火を止める
たったこれだけで「できあがり」出汁いらずです!
スイスチャードだけで作る場合は水量にたいしてスイスチャードを多めに入れてください。
葉っぱだけとは思えないコクと独特の香りに魅了されると思います。
作りたては葉の色が映えていることもあります。
そして葉の色はくすみますが、スイスチャードがじっくり煮込まれた翌日のお味噌汁も抜群においしいです。
どちらも究極シンプルなメニューですので、スイスチャードの鮮度や調味料の質が味にダイレクトに表れます。
無農薬のスイスチャードや無添加の調味料でつくると、きっとこの上ない上質な自然な美味しさに幸せを感じられます。
ふだん草でももちろん同じように作れます。
ふだん草の方が色を気にしなくていいので初めは作りやすいと思います。
色鮮やかなスイスチャードの栄養は?
スイスチャードは見た目のビタミンカラーが表す通り、とても栄養素豊かです。
各種ビタミン、カリウムやカルシウム、マグネシウムなどのミネラル成分が多く含まれ栄養価が高いです。
β-カロテンも含まれるので抗酸化作用や免疫力アップの効果もあります。
国によってはスーパーグリーンと呼ばれることもあるそうです。
鮮度を保つスイスチャードの保存方法
新鮮なうちに食べるのが最も栄養価も高く美味しいですが、もし保存する場合に鮮度を保ちやすい方法となります。よく洗って水分が適度についた状態でビニール袋に入れて冷蔵庫で保存します。
冷蔵庫の温度が低すぎると葉が凍傷になってしまうので野菜入れなどの出来るだけ0℃にちかい環境にします。
ビニール袋は鮮度を保ちやすい加工がしてあるものを使うと効果が上がります。
無農薬の物は冬場ではこれで1週間は優に持ちますが、やはり出来るかぎり早めに食べるのがおすすめです。
スイスチャードをお家で育ててみよう!
栽培方法については各種サイトで詳しく記載されてると思うので、ここではおさえておきたいポイントのみ解説します。
芽が出れば虫にも病気にも強く、丈夫で育てやすいお野菜ですが、芽が出るまでに気を付けたいことがあります。
スイスチャードは種の殻が固いので、発芽するのに水分を必要とします。
種まきは乾かないように雨の前や後にすると上手くいきやすいです。プランターの場合はしっかり湿らせた土に種を蒔きます。
どちらもあまり乾くようであれば水やりをします。
ただし発芽には酸素も必要なのでお水のあげすぎには注意します。
発芽さえしてくれれば、あとは元気にすくすく育ってくれるはず。日々見守ってあげてください。
ふだん草も同じように育てることが出来ます。
自ら育てたお野菜は自分と共鳴するので心と体に沁みて最高に美味しいです。
きっと自分で育てたスイスチャードでつくったお料理は毎日に幸せを与えてくれるでしょう。
スイスチャードを育ててみることをおすすめします。
見て華やか、料理して楽しい、育ても楽しい、食べて満足
スイスチャードを知って生活に取り入れるだけで、毎日の生活が豊かになると思います。
自ら育てることで実は身近になりやすいお野菜。スイスチャードの生命力に触れて自分に取り入れ、どんどん元気になりましょう。
この記事を書いている人
三ツ橋大輔
1971年神奈川県横浜市生まれ
いのちのおやさい農園主
【プロフィール】
大学卒業後、建築設備の現場監督や型枠大工など建築関係の職種に携わる。
初めての工事現場に入ったとき地下二階分の深さまで大きく掘られた地面の穴に地球の痛みを感じ、ショックを受ける。
その後一度日本を離れてアジアの旅に出る。
主にタイ北部の山岳民族の村に滞在し自然と調和した暮らしを経験する。
タイの田舎で目の前で〆たばかりの鶏肉を使った家庭料理を食べ、あまりの美味しさに感動し日本に帰り30歳から料理の世界に入る。
大衆料理を目指し、横浜で中華料理の超人気店にて見習いからスタートする。
見習い時代、前菜で創作した合わせ調味料の味を店舗の総責任者に見込まれ、異例のスピードで鍋のポジションに抜擢され1日100食以上の鍋を振るう日々を送る。
調理場の責任者となり発注業務を行いながら毎日納品される野菜、肉、魚などの生鮮食材がまるで工場製品の様に均一化されていることへの違和感を感じる。
同時に「目の前にある食材はいったいどこでどのようにして育ちどうやって厨房に届くのか?」に関心を持ち始める。
2012年に「人生を変える」と決意する。
2013年オーガニックマルシェにて出店していた新規就農者を通じて「農業」という仕事に出会う。
自然農法の畑を訪れその世界感に魅了され突き動かされる衝動により農の世界へ進むことを決意する。
2014年から2年間、有機農家にて研修する。
2016年『いのちのおやさいfarmette』開園。
2023年 仲間と共に新たに 『いのちのおやさい 』をスタート。