クワで耕す

ミネラル不足は土が原因?ミネラルたっぷりの美味しい野菜を育てよう!

ミネラルは5大栄養素のひとつ、人間にとって「身体が一番最初に必要とする栄養素」になります。
体内で一切合成が出来ないので、食べ物からとり入れることが必要です。
現代はミネラル不足が問題になっていますが、大きな原因のひとつに食べ物のミネラル分が少なくなっていることがあげられます。
どうして食べ物からミネラル分が少なくなってしまったのでしょうか?
その理由をたどっていくとどうやら「食べ物が育つ土(土壌)」に秘密がありそうです。
人間にとって大切で重要なミネラルという栄養素について土に焦点を当て、無農薬の農家の視点から実体験も含めて解説します。
では、はじめに実際にいまの食べ物はどのくらいのミネラルを含んでいるのから見ていきましょう。

いま野菜から80%近くのミネラルが減少している⁉

 お野菜の栄養価を調べる方法に文部科学省が発表している食品成分表(正式名称は日本食品標準成分表)があります。

1950年に初版が公表、最近では5年ごとに改正がされ2023年3月時点では2020年版(八訂版)が最新版です。
比較データが出ているので見てみると、特に代表的なミネラルである鉄については激減していました。
ほうれん草、人参やキャベツは90%近く減少しています。
その他にも亜鉛、銅、モリブデンなど代表的なミネラルの他にビタミンAまで大幅に数値が下がっています。
たった70年ほどの間にしてはあまりにも大きな変化です。
本当にそれだけの栄養素が減ってしまったのでしょうか?
もう少し詳しく調べてみると、検査方法が品成分表が開始されてから変わったことも原因になっているようです。
検査の精度が格段に上がったため以前と今の数値を単純には比較できないようです。

ただし、まったく参考にならないかと言えばそうとも言えない様です。
この70年間で食生活の変化も含め、ミネラル不足に疾患や生活習慣病がまん延しました。
多くの日本人が定期的な健康診断では鉄、亜鉛、マグネシウムなどのミネラル不足を指摘される状況になっています。
また、この状況は日本だけでなく広く世界中で起こっています。
これらの理由は食べ物そのもののミネラル分が減っていると充分考えられます。

有機農業の記事にも書きましたが、戦後の70年の間に栽培方法や流通などの農業の在り方が大きく変わりました。
当時はとにかく食物の大量生産が必須だったので、効率的に育てられる農薬や化学肥料を使う栽培方法(慣行農法と呼びます)が急速に広がりました。
「食品成分表の数値の減少」と「農業における栽培方法の激変」は時期的にぴったり一致します。
なぜ食べ物のミネラル分は減ってしまったのか?農業の変化という方向から見ていきましょう。

原因は土の中のミネラルの減少!でもどうしたらよいの?

健康な畑の土の中を覗くと、目には見えないですが無数の微生物が生息します。

なぜ微生物がいるとわかるのでしょう?
葉や枯れ草などの有機物が土の中に入ったり土の上に置かれると分解して時間が経つと土にります。
この有機物の分解の働きをしているのが土中にたくさんいる微生物です。(これらの微生物を土壌菌や土壌微生物などと呼びます。)
土の中に土壌菌が多いほど、活性していて「生命力のある土」と言えます。
この土壌菌が植物や動物の糞や死骸を分解する働きにより、多様なミネラルやビタミン・アミノ酸を含む養分豊かな土になります。

この土壌菌の中にはお野菜の成長に有用的に働くもの・中立なもの・有害なものがあります。
お野菜にとって有害な土壌菌があるとそこで育つお野菜に対して必ず悪く働くわけでないですが、生育環境や天候などで抵抗力が落ちているとお野菜が病気にかかる原因になります。
戦後、食料を調達するために出来るかぎり早くお野菜を育てるために開発されたのだが化学肥料と呼ばれる化学合成肥料です。
お野菜が生育するために必要な代表的な肥料分のみを抽出して直接吸収されるように作られているのでお野菜は早く育ちます。
ただ本来の生育スピードよりも格段に速いため病気に対する抵抗力が弱くなります。
お野菜が育つ土壌にお野菜に対して有害な土壌菌がいると病気にかかる確率が高くなります。
少し怖いたとえですが人間を効率的に育てようと子どもを点滴の栄養注射だけで育てている様な状態になり、早く大きく育ちますが決して健康的とは言い難いです。
さらに大量に施すためお野菜自体が栄養過多(人間でいうと肥満状態)になり虫がつきやすくなります。

そのためお野菜が病気になることを効率的に抑えようと開発されたのがいわゆる農薬と言われる化学合成農薬です。
化学肥料で育てたお野菜につく虫や病気の原因になる有害な土壌菌を死滅さるために使われます。
農薬を使うことでお野菜の生育に有害な土壌菌は死滅しますが、同時にほかのすべての土壌菌にも同じように作用します。
お野菜や土中に農薬を施すことは、畑に土壌菌がとても少ない状態を作り出します。
土壌菌が少くなることで、土自体が養分を生みだせなってしまいます。
お野菜を速く大きく育てるのが効率的なので化学合成肥料を大量に投入して農薬をまく、これが日本で一般的に行われている慣行農法の考え方です。
このような栽培方法が戦後70年前に始まり現在もなお続いています。

それ以前は土に有機物を入れて土壌菌を増やし、土を豊かにしてお野菜を育てるという考え方でした。
日本では戦後一気に農業の在り方が変化しました。
こうした変化は日本だけではなく、先進国を中心に世界中で起こっています。

化学合成肥料は窒素、リン酸、カリウムなどお野菜が早く大きく育つための特定の成分だけで出来ています。
有機的な肥料はその他にもミネラル分を含む多様な微量栄養素を含みます。
大きな違いは有機的な肥料分は土壌菌により分解されてお野菜が吸収される形になりお野菜に吸収されることに対して、化学肥料は土の力をほとんど介さずに直接お野菜に吸収される形になっていることです。
有機的な肥料は土が育ちお野菜が育つという全体バランスを作り出しますが、化学肥料と農薬はセットで土の力を弱めてしまいます。

もう少し詳しく説明すると、有機的な肥料・化学合成肥料どちらの肥料分も土壌菌により硝酸態窒素という形になってお野菜に取り込まれます。
有機的な‏肥料はたくさんの土壌菌がゆるやかに硝酸態窒素を生み出し必要な分だけお野菜に吸収されます。
それに対して大量の化学合成肥料は土中に残った少ない土壌菌によってストレートに大量の硝酸態窒素になりお野菜に吸収されます。
お野菜は無邪気な子どもが甘いものをどんどん食べるように、与えられた硝酸性窒素は与えられただけ吸収してしまいます。
本来はお野菜が吸収した硝酸性窒素はお野菜の体内ですべて分解されますが、量があまりに多いと分解されずは硝酸性窒素のままお野菜に残ります。
健康なお野菜の葉は濃い黄緑色くらいの色合いですが、こうした硝酸態窒素過多のお野菜の葉は過剰に濃い緑色になるのがひとつの特徴です。
そしてお野菜に含まれた硝酸態窒素は人間の体内に入ると有害に働くことがたくさんの医学的な研究によって明かされているので病気の原因になることも考えられます。
(ただし、有機的な肥料も未完熟の状態で大量に土中にいれると同じように硝酸態窒素が大量に生みだされる原因になるので注意は必要です)
この様に農薬・化学肥料のセットはお野菜のミネラル分を減少させるだけでなく私たちの健康にも良くない効果を生みだしてしまいます。

また土中にあまりにも大量に生みだされた硝酸性窒素はお野菜に吸収されきらなかった分は雨により地下水に流れ込み、水質汚染の原因になります。
そのためほとんどの農地では10メートル程度の浅井戸の水は飲用にはできなくなってしまいました。
過剰になると硝酸性窒素は生成される過程で窒素酸化物(NOx)を発生させ温暖化の原因となるとも指摘されています。
現在主流で行われている農業のあり方はお野菜の毒性を生み出し、地球環境に有害になっていると言わざるをえない状況です。

本来の土壌菌が豊かな畑では多様なビタミンやミネラル分がゆるやかに変化して適切な時間をかけてお野菜に吸収されるので多様な栄養素をしっかりと含んだお野菜が育ちます。
また地球環境にとっても負荷がなく、本来の営みと協調して存在できます。

世界的に起こっているこの状態に対してどうしたらよいのでしょうか?
私たちは一体何をすればよいのでしょうか?

答えはシンプルで土壌菌を豊かにする栽培方法で育てられた無農薬や有機のお野菜を選ぶことです。
日々の食べ物の選択はまず健康のためであり、買うことでそれを栽培している生産者へお金の流れを生み出します。
土壌菌を豊かにする有機的な栽培方法の農家さんのお野菜を買えば、その農家さんは活性化するのでもっと土壌菌が増えます。
このひとつひとつのサイクルが広がることで土壌菌が豊かな畑が増えて、オーガニックのマーケットも拡大して大きな変化になります。
そうなるといろいろなところでオーガニックなお野菜が販売され、遠くに行かなくても近くで手ごろに美味しくてミネラルたっぷりの美味しいお野菜が手に入り食べられる。
お野菜のミネラル分が増えると、それを餌にしている動物たちや水で繋がっている海で育つ魚たちも同じ変化が及びます。
土壌菌も増えて海もきれいになって地球にも優しく、みんなが健康で元気になり豊かな世の中になります。
いいことずくしですね!


土の視点からお野菜に含まれるミネラル分の変化を見てきました。
食品成分表で見る数値の変化は一概に参考に出来ないにしても、たった70年間の間に食べ物のミネラル分や栄養価は大きく変化してしまった様です。
最終的に私たちの毎日食べる食べ物選びが、自分自身の健康はもちろん地球の未来にも大きく繋がっていることが分かりました。
ぜひオーガニックな食べ物を毎日の生活に取り入れましょう!

とは言えオーガニックなお野菜はマーケットがまだまだ小さいので買いにくいことが難点です。
どうすれば買えるのかをこちらの記事に書きましたので是非参考にしてみて下さい。
私たちの畑でもいろいろ試行錯誤しながらトライアンドエラーで土壌菌豊かな土でお野菜を育てています。

また自分で食べるお野菜を自分で育ててみるのも、健康と地球のためにとても効果的です。
もちろん土壌菌をたくさん増やす栽培方法で!
楽しみながらお野菜を育てて美味しくてミネラルをたっぷりの鮮度バツグンの美味しいお野菜が食べらる、自分にも地球にも優しい生活はとても豊かで幸せでしょう。

 

この記事を書いている人

ecプロフィール大輔

三ツ橋大輔
1971年神奈川県横浜市生まれ 
いのちのおやさい農園主

【プロフィール】
大学卒業後、建築設備の現場監督や型枠大工など建築関係の職種に携わる。
初めての工事現場に入ったとき地下二階分の深さまで大きく掘られた地面の穴に地球の痛みを感じ、ショックを受ける。
その後一度日本を離れてアジアの旅に出る。
主にタイ北部の山岳民族の村に滞在し自然と調和した暮らしを経験する。
タイの田舎で目の前で〆たばかりの鶏肉を使った家庭料理を食べ、あまりの美味しさに感動し日本に帰り30歳から料理の世界に入る。
大衆料理を目指し、横浜で中華料理の超人気店にて見習いからスタートする。
見習い時代、前菜で創作した合わせ調味料の味を店舗の総責任者に見込まれ、異例のスピードで鍋のポジションに抜擢され1日100食以上の鍋を振るう日々を送る。
調理場の責任者となり発注業務を行いながら毎日納品される野菜、肉、魚などの生鮮食材がまるで工場製品の様に均一化されていることへの違和感を感じる。
同時に「目の前にある食材はいったいどこでどのようにして育ちどうやって厨房に届くのか?」に関心を持ち始める。
2012年に「人生を変える」と決意する。
2013年オーガニックマルシェにて出店していた新規就農者を通じて「農業」という仕事に出会う。
自然農法の畑を訪れその世界感に魅了され突き動かされる衝動により農の世界へ進むことを決意する。
2014年から2年間、有機農家にて研修する。
2016年『いのちのおやさいfarmette』開園。
2023年 仲間と共に新たに 『いのちのおやさい 』をスタート。

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