お野菜って大根やトマトなどいろいろな種類がありますよね。
大根や人参、ゴボウといった根菜からナス、ピーマン、トマトなどの果物。ジャガイモ、サツマイモ、里芋といった芋類や小松菜やキャベツ、白菜などの葉物野菜。
例えば大根、トマト、里芋、キャベツなどはお野菜の「種類」になりますが、それぞれの種類のなかに、もっと細かいいくつのも種類があります。
大根の中には「宮重大根」「大蔵大根」「三浦大根」「聖護院大根」「打木源助大根」などいろいろな種類があり、これらを「品種」と呼びます。
僕は現在、無農薬で多品目のお野菜を育てていますが、季節ごとにたくさんの種類のお野菜を育てることで、お野菜の中には品種があることを知りました。
一つの種類のお野菜の中にはたくさんの品種があり、それぞれの品種によって形や大きさ色も異なり、食感や味わいにも大きな違いがあります。
里芋にもたくさんの品種があり、品種ごとに違いがあります。それぞれの品種について特徴を解説し、おすすめの食べ方などを紹介します。
里芋の種類はどれくらいあるの?
里芋は分類上「サトイモ科サトイモ属」に分類されるお野菜です。
原産地はインド東部やインドシナ半島で温暖な気候を好むお野菜です。
海外の温かい国や地方では主食として現在の日本のお米や欧米のパンなどの穀物のように食べられています。
同じ「サトイモ科」のお野菜で熱帯アジアやオセアニアで栽培され食用する「イモ」を総称して「タロイモ」と呼びます。
タロイモ栽培歴史はとても長く狩猟採集時代から人間の重要な食料資源で、約1万年前に始まったと言われる農耕の起源に深くかかわっているという文献もあります。
これらの地域で食べられているタロイモは見た目や味わいが里芋ととてもよく似ています。ホクホク感の強い里芋といった感じでほのかな甘みもあります。
ハワイ料理や台湾のスイーツなどにも使われています。
世界中で広く食されているタロイモ、「里芋」は日本のタロイモにあたり英語でサトイモは「Taro」と表記されます。
里芋の名前の由来は?
日本における歴史もかなり長く、お米よりも前も縄文時代には日本に伝わっていたと言われています。
日本のタロイモは山で育つ「ヤマイモ」に対して里(村)で育つので里芋と呼ばれるようになりました。
縄文時代は地域によっては里芋が主食だったという情報もあります。
世界中のタロイモの品種は1500種類とも言われ、日本の里芋の中にも200種類以上の品種があります。
その中で代表的な品種をいくつかご紹介する前に、里芋の育ち方とそれぞれの部位による食感の違いを大まかに解説します。
里芋ってどんな野菜?
里芋は種からではなく、お芋そのものを種芋として植えます。農園のある神奈川県藤沢市では種芋の植え付けは4月~5月です。
種芋から芽が出て発芽し、葉っぱを広げて光合成をしながら、始めに種芋の上に親芋が育ちます。
夏の間大きな葉を広げながら、親芋のまわりに子芋がつき、品種によっては子芋のまわりに孫芋が育っていきます。
秋になるとついた子芋や孫芋がじわじわ大きく育ち、収穫時期を迎えます。
その後は本格的な冬に入る手前の強い霜が降りるまでに掘りだして収穫します。神奈川県では11~12月になります。
里芋は寒さに弱く気温が下ると葉が痛み始め、霜にあたると葉が枯れてしまいます。
その為日本の寒い冬は越すことが出来ませんのである一定まで育ったら収穫となりますが、南国では寒さで枯れないのでそのまま育つと花が咲くそうです。
栽培期間は7~8カ月とじゃがいもの3~4カ月と比べてよりかなり長いので、値段はじゃがいもより高くなります。
続いて収穫した時の姿や親芋、子芋の違いを見ていきましょう。
子芋は?親芋は?里芋の部位による食感の違い
収獲のために掘りだした里芋は親芋のまわりに子芋や孫芋が付いた状態です。
子芋や孫芋のつき方は品種によって違い、品種によって孫芋が付きやすかったり、子芋がつかないなどの違いがあります。
親芋や子芋は大きさに差がありますが、食感にも違いがあります。
部位によるおおまかな違いは
・親芋はホクホク系
・子芋はねっとり系
の食感です。
子芋に孫芋がついた場合は子芋が少しだけ親芋の性質を持ち
・子芋はホクホク感のあるねっとり系
・孫芋はねっとり系
の食感
子芋がつかない品種は
・ねっとり感のあるホクホク系
になります。
基本的に末端にいくにつれてねっとり感が強くなります。
あとはそれぞれの品種の個性になりますので、いよいよ代表的な品種で特徴を見ていきましょう。
サトイモの代表的な7つの品種の特徴、おすすめの調理法も紹介
・土垂(どだれ)…子芋と孫芋が付く、里芋の中で最もメジャーな品種。スーパーや八百屋さんなどで一般的に販売されている里芋はほぼこの土垂です。
全国で栽培されていますが特に中関東地方での栽培が多い品種。全国的な旬は10~12月。保存性がとてもよいので貯蔵して通年流通させるのに向いています。
基本的におしりまでふっくらしていて楕円形をしています。一般的に里芋と言っておもいうかべる形です。
「肉質がやわらか」「ねっとり感が強い」「ぬめりが多い」という食感の特徴があり「煮崩れしにくい」性質があるので煮物や汁物に特に向きます。
・石川早生(いしかわわせ)…子芋と孫芋が付き、土垂の次にメジャーな品種で形もよく似ています。
違いは早生なので育ちが早く収穫時期が早いこと。孫芋が大きくなる前に早い時期に収獲するので主にたべるのは子芋になります。
土垂の生産量が関東が多いのに対してこちらは主に関西より西の地域で栽培されています。旬は8~9月。九州では7月にも収穫されます。
大阪府で古くから栽培されていて名前も旧石川村の地名から付けられました。
土垂よりも小ぶりで真ん丸に近い形をしています。「粘り気が強い」「味わいは淡白」「皮がつるんとむける」というのが食感の特徴です。
小さくて丸い形を生かして、蒸しものや煮物によく合います。
セレベス…子芋が大きく育つ品種、親芋と子芋ともに食用にされます。芽や茎が赤いのが特徴で赤芽ともいわれています。味は美味。
「ぬめりが少ない」「ホクホク系」「肉質がしっかりしている」のが食感上の特徴で煮物や揚げ物によく向きます。煮物は食感しっかり仕上がります。
烏播(ウーハン)…1940(昭和15)年に台湾から導入された品種で子芋がつきます。奈良県の特産品です。茎が黒みがかるものもあります。
形は楕円ですが、尻つぼみになるものがよく見られます。晩生の品種で栽培期間が長く敬遠されがちでほとんど流通してません。
「とても強いねばりがある」「肉質が柔らかい」「ねっとり感強い」「きめが細かい」のが食感の特徴。「煮物」「蒸しもの」に向き、煮物はねっとり仕上がり、しっかり蒸すととても美味です。
京芋…タケノコのような細長い形をしている品種。子芋はほとんどつかず、20~40cmになる親芋を食します。別名タケノコ芋。宮崎県での主に栽培されています。
「ホクホクしている」「ぬめりが少ない」「肉質がしっかり」「皮が剥きやすい」という食感の特徴で煮物や揚げ物に向きます。
煮物はホクホクした仕上がり、細長く切って揚げるととても美味しい里芋のフライドポテトになります。
海老芋…子芋が大きく育つ品種、親芋と子芋、孫芋に加えて茎も食用にされます。尻つぼみの楕円形でエビのように湾曲している姿から、海老芋と呼ばれています。
京料理でよく使われるのでこちらも京芋と呼ばれることがありますが、タケノコ芋とは別の品種です。
「きめが細かい」「煮崩れしにくい」「肉質がクリーミー」という特徴があり、煮物や揚げ物に使われます。
八つ頭(やつがしら)…親芋と子芋が一体化した珍しい形をしています。塊になった親芋、子芋ともに食し、赤い茎も食用にします。
ちょっと飛び出た子芋の部分が8つの頭に見えるので「やつがしら」という名前になりました。「八」が末広がりで縁起が良いので、主に関西ではお正月のおせち料理に使われます。
「粘り気は少なめ」「風味と甘味がある」「ホクホク系」「肉質がしっかり」「ぬめりも少ない」という食感の特徴があり、里芋の中で一番美味、とも言われています。
「煮物」や「揚げ物」に向きます。特に煮物には最適で、やわらかくホクホクとした食感に仕上がります。
品種ごとの写真7枚はこちらから引用しました。
「旬の食材百科」
https://foodslink.jp/syokuzaihyakka/syun/vegitable/satoimo-varie.htm
また、土垂や石川早生のように一般的に親芋を食べない品種の親芋も「ホクホク系」で食べられます。
農園の里芋は特に親芋を食べる品種ではありませんが、厚めに切ったりサイコロに切ってステーキにしてとても美味しく食べています。
煮物や汁物にはあまり向きませんが「焼く」「揚げる」にするととても美味しく仕上がります。家庭菜園などで育てている方は是非やってみて下さいね。
その他にも全国各地に地域に根付いたたくさんの里芋の品種があり、それぞれに個性があります。とても美味しい品種もたくさんあります。
私たちの農園でも福井の品種や横浜の品種などいろいろな品種を育ててきました。現在はよく育ち、とても美味しいので横浜の在来品種を育てています。
土垂と烏播の性質を両方持ったような性質です。
里芋は品種によって個性がとても豊かです。
形や食感はいろいろありますが、おおまかな性質で分けると上で紹介した7つの品種に大きく分けられる印象があります。
いろいろな品種の里芋を食べてみよう
里芋には品種があることを見てきました。
里芋以外にもそれぞれの種類のお野菜の中には品種があり、それぞれ個性的ですが日本ではスーパーや八百屋さんでは皆同じような形や大きさの大根だったり人参だったり、ナスやピーマンもようだと思います。
これには理由があり、日本国内のお野菜は80%以上農協(JA)を通じて流通します。
農協はお野菜の種類ごとの大きさや形の基準を設けているので、農家さんはその基準に沿うお野菜を栽培し出荷するため、大根はこんな大きさで形、人参はこんな色でこんな形というのがほとんど均一化されています。
その為、一般的にお野菜は種類ごとに認識されることが多くなりますが、今回の里芋のように同じお野菜でも品種により大きさも形も違いがあるとともに、食べてみると食感や味わいに驚くほど差があります。
これらのスーパーとは違う品種や珍しい品種は長距離の流通にはほぼ乗らないので、産地の物を販売する各地の直売所で見かける可能性が高くなります。
特に無農薬農家の行う直売所や宅配などでは販売していることが多いので、目にした方は手に取ってぜひ購入し食べてみることをおすすめします。
新しいお野菜の美味しさに新しい発見があり、毎日食べているお野菜の見方がガラッと変わるかもしれません。
直売所についてはこちらで詳しく見ていただけます。
直売所ってどんなところ?無農薬野菜の購入方法をご紹介
この記事を書いている人
三ツ橋大輔
1971年神奈川県横浜市生まれ
いのちのおやさい農園主
【プロフィール】
大学卒業後、建築設備の現場監督や型枠大工など建築関係の職種に携わる。
初めての工事現場に入ったとき地下二階分の深さまで大きく掘られた地面の穴に地球の痛みを感じ、ショックを受ける。
その後一度日本を離れてアジアの旅に出る。
主にタイ北部の山岳民族の村に滞在し自然と調和した暮らしを経験する。
タイの田舎で目の前で〆たばかりの鶏肉を使った家庭料理を食べ、あまりの美味しさに感動し日本に帰り30歳から料理の世界に入る。
大衆料理を目指し、横浜で中華料理の超人気店にて見習いからスタートする。
見習い時代、前菜で創作した合わせ調味料の味を店舗の総責任者に見込まれ、異例のスピードで鍋のポジションに抜擢され1日100食以上の鍋を振るう日々を送る。
調理場の責任者となり発注業務を行いながら毎日納品される野菜、肉、魚などの生鮮食材がまるで工場製品の様に均一化されていることへの違和感を感じる。
同時に「目の前にある食材はいったいどこでどのようにして育ちどうやって厨房に届くのか?」に関心を持ち始める。
2012年に「人生を変える」と決意する。
2013年オーガニックマルシェにて出店していた新規就農者を通じて「農業」という仕事に出会う。
自然農法の畑を訪れその世界感に魅了され突き動かされる衝動により農の世界へ進むことを決意する。
2014年から2年間、有機農家にて研修する。
2016年『いのちのおやさいfarmette』開園。
2023年 仲間と共に新たに 『いのちのおやさい 』をスタート。