森の木と太陽

植物はどんな一生をおくるの?種からはじまる物語

この記事では「植物が種からどのように成長し子孫を残すのか」について大豆を例に、無農薬の農業者がわかりやすく解説していきます。

・「植物っていったいどんなふうに育つのかな?」ということが知りたい方
・これからお野菜を育ててみたい方
・もうすでに家庭菜園をやっている方
向けの記事です。

大豆のトンネル

~はじめての家庭菜園シリーズ~
【はじめての家庭菜園におすすめ知識①】
【はじめての家庭菜園におすすめ知識②】


お野菜も植物の一つ、知っておくとお野菜を育てるときに、目の前のお野菜がどの成長段階にあるのかイメージしやすく役立ちます。
ここでは「種で子孫を残す植物=種子植物」について書いていきます。
身の回りでよく見かける森や公園にある草木やお野菜はみな種子植物です。
(植物は種子植物のほかに、藻や苔、シダなど「胞子で子孫を残す=胞子植物」があります)

では身近にあるけれど意外と知らないお野菜や草木、植物の世界を一緒に見ていきましょう。


大豆の一生とは?発芽~種を残すまで

畑の大豆ここでは大豆について説明しますが、草木もナスもキュウリも小松菜などみな同じように一生を送ります。

大豆について知ることが出来ればどんな植物や植物のことも同じように分かるようになります。
自然界では土の中の種が自然に芽を出すところから始まり、栽培では大豆の種まきをするところから始めます。


①「種まき」

種
大豆の種は大豆そのもの。
この中には双葉になる部分、初めの小さな茎や根になる部分がすでに含まれています。
種は酸素、水、温度の条件が整うと芽をだします。
種まきは土の中に種を落として、この条件を整えてあげる行為です。

②「発芽」

発芽
始めに出るのは双葉。
大豆ははじめに子葉という一つ目の双葉を出し次に初生葉という二つ目の双葉をだします。
双葉について、大豆は珍しく2種類の双葉をだしますが、ほとんどのお野菜や草木の双葉は1種類です。
芽を出した大豆は同時に土の中に根も伸ばし始めます。


③「成長」

成長

成長
双葉の次は本葉を出しながら背を伸ばして成長していきます。
光合成をして大気中の栄養素を摂り入れるのは葉です。
根も背の高さと同じくらい土の中に伸ばしていきます。
土の中の栄養素を吸収するのは根です。
成長した段階で収穫するのは小松菜や、キャベツなどの葉物や長ネギ、大根や人参などの根菜です。
葉や根が充分に成長した段階で収穫します。


④「開花」

開花
ある程度まで成長すると、花芽を付け始めます。
小さかった蕾が膨らんでやがて花びらを広げて満開を迎えます。
大豆の花は紫色や白色(品種によって違う)で小さくてとてもキレイで可愛いです。
花が咲くと受粉が起こります。
無事に受粉を終えると花びらが落ちて、そこにサヤが付きます。
サヤの中には実があります。
実は種になります。


⑤「結実」

結実
サヤと中の実が育ちどんどん大きくなります。
葉や根から吸収した栄養素はほとんど中の実に注がれます。
完全に膨らんだ状態が枝豆です。
この段階で収穫するのは、枝豆やナス、トウモロコシなどです。


⑥「生熟」

生熟
膨らみ切ったサヤの中の実が栄養素を蓄えていく段階です。
栄養素はほとんど実にいくので、葉は徐々に黄色くなります。
この段階で収穫するのは、カボチャです。


⑦「熟成」

熟成
完全に実に栄養素が蓄えられた状態です。
中の実は次のいのちを含む種になります。
サヤは茶色くカラカラに乾燥し、葉も茶色になるか落ちてなくなります。
大豆は次の状態で土の上に落としてしまうと収穫できないのでこの⑦の段階で収穫します。
この段階で収穫するのは、大豆、米、麦などです。


⑧「爆ぜる(はぜる)」

爆ぜる
自然界では、サヤが弾けて種を飛ばします。
種は土の上に落ちて、しばらく眠ります。
そしてまた条件が整うと芽をだします。


植物の2つの成長 

 植物の一生(サイクル)


大豆は一生で①~⑧のサイクルを繰り返しながら、次のいのちへ繋いでいきます。
この永遠に続くサイクルは大豆だけでなく、種を残すすべての植物でもまったく同じです。

植物の一生の中で大きな出来事が2つあります。
それは②「発芽」と④「開花」です。

植物の一生(成長)

植物は一生のうち二つの種類の成長をします。
・発芽~開花まで=「自身の身体を大きくするため」の成長
・結実~熟成まで=「種となる実を育てるため」の成長

「自分が育つか」「次のいのちを育てるか」同じ「育つ」でも全く違いますね。
この成長の方向性が変わるターニングポイントが④の「開花」です。
難しい言葉ではこのタイミングを「花芽分化(はなめぶんか)」と呼んだりします。


②「発芽」と④「開花」どちらも、とてもダイナミックな変化です。

種だった状態から芽を出す「発芽」という変化。
これは人間でいうと母体から生まれでる「誕生」。

自身の成長から次世代への成長へ変化する「開花」のタイミングで起こる「花芽分化」という変化。
女性は妊婦さんになりお腹の子と共に過ごし出産をむかえるまで、これを味わえるのだろうと思います。

 

 

森と空

今回は大豆栽培を題材に植物の一生を見てきました。
一粒の種はたくさんの種を残します。
自然界では一粒一粒の種はそのタイミングがくると芽を出し育ち、またそれぞれがたくさんの種を残します。
たった一粒の種はこの一生のサイクルを繰り返すことで無限に広がっていきます。
自然界が見せてくれる圧倒的な豊かさはの秘密はこの「いのちのサイクル」に隠されていますね。

それぞれのお野菜については成長段階ごとに収獲のタイミングを記載しました。
人はお野菜が次のいのちを結ぶ途中で、収穫してそのいのちをいただきます。
「お野菜を自ら育てて食べる」ということは、ダイレクトにこの「いのちの味」を味わえることだと思います。
僕は農業をはじめて「いのちの味」を味わえたときにとても感動しました。
これが「いのちのおやさい」の名前の由来でもあります。

種からはじまる物語。
楽しんでいただけましたでしょうか?
小さくて大きな自然のいのちの循環が皆様にも少しでも伝われば幸いです。

 

~はじめての家庭菜園シリーズ~
【はじめての家庭菜園におすすめ知識①】
【はじめての家庭菜園におすすめ知識②】

 

この記事を書いている人

ecプロフィール大輔

三ツ橋大輔
1971年神奈川県横浜市生まれ 
いのちのおやさい農園主

【プロフィール】
大学卒業後、建築設備の現場監督や型枠大工など建築関係の職種に携わる。
初めての工事現場に入ったとき地下二階分の深さまで大きく掘られた地面の穴に地球の痛みを感じ、ショックを受ける。
その後一度日本を離れてアジアの旅に出る。
主にタイ北部の山岳民族の村に滞在し自然と調和した暮らしを経験する。
タイの田舎で目の前で〆たばかりの鶏肉を使った家庭料理を食べ、あまりの美味しさに感動し日本に帰り30歳から料理の世界に入る。
大衆料理を目指し、横浜で中華料理の超人気店にて見習いからスタートする。
見習い時代、前菜で創作した合わせ調味料の味を店舗の総責任者に見込まれ、異例のスピードで鍋のポジションに抜擢され1日100食以上の鍋を振るう日々を送る。
調理場の責任者となり発注業務を行いながら毎日納品される野菜、肉、魚などの生鮮食材がまるで工場製品の様に均一化されていることへの違和感を感じる。
同時に「目の前にある食材はいったいどこでどのようにして育ちどうやって厨房に届くのか?」に関心を持ち始める。
2012年に「人生を変える」と決意する。
2013年オーガニックマルシェにて出店していた新規就農者を通じて「農業」という仕事に出会う。
自然農法の畑を訪れその世界感に魅了され突き動かされる衝動により農の世界へ進むことを決意する。
2014年から2年間、有機農家にて研修する。
2016年『いのちのおやさいfarmette』開園。
2023年 仲間と共に新たに 『いのちのおやさい 』をスタート。

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